吉行淳之介「蠅」

読書感想文的な何か

見ない方が良いと思うよ、完全自分用のメモだよ

ちなみに、高校生の文章読本(筑摩書房)のやつを読んでます。

 

 

「少女は、慎重に育てられてきた。」

この一文からもうやられた!と思った。

大切に育てられてきた、っていうのとはまたニュアンスが違う。

この、今まで表現できなかったけど「あぁこれ!」ってなる文章。凄い。

 

更にこの文章って、どうして少女は口紅を取り出したのか、唇に塗ったのか、どんどん濃くしていったのか…どうして少年の背中に蠅を見たのかとか、「どうして」の部分が徹底的に描かれていないなぁって言うのが印象的。でもって大好き。

ここって、逆に「どうして」の部分がある方が違和感を覚えると思うんだよねー。

私もこの文章読んで、あぁこれ!これ!って凄くなったもん…。でも、どうしてこれ!って思ったのかあんまりよく分かんない。全くおんなじことをしたわけでもないし、少女と同じことを思ったわけでもないんだけど、この感覚ね!ってなる。

その感覚的な部分に理由をつけると、逆になんかコレジャナイ感が出たなーと思う。やっぱ凄い文だと思う。これが正に、文章の前に書かれている「感覚的な記述とは~」の事なんだろうな!

 

 

 

これだけで終わってもつまんないから、この「あぁこれー」って何ぞやって話をしたい(自己満)

 

まず本のヒント?みたいなのに従って読み解くなら、2回だけ本文中で「少年」が「男」に変わってるんだよね、これこそ少女が見た蠅の正体と言っても過言ではないかと

ちなみに友達はこの感覚全然わかんない!って言ってました…が…そっかぁ…ないかぁ……れ…私 だ  け………?

 

まず、「夜光塗料を塗りつけたよう」で、「外皮はつるつる」してて、「粘った液体がその一匹一匹滲み出ているよう」な、「あおみどり色に光っている蠅」を背中一面に貼りつけている人を想像してよ??

私は、一言でいうとめちゃくちゃ気持ち悪いです。キモイじゃなくて気持ちが悪い。

そういうのが好きな人も居るだろうけどさ。

とにかく、生理的にムリ!!!!ってやつですな。

私としては、その感覚が、少女が「男」を見たときの感覚だと思うよー。

その瞬間、少女にとって「男」は生理的にムリっていう拒絶反応を示すものでしかなくなったみたいな。この、なんていうか、「ヒエッ」みたいな。あるあるすぎて辛いよ!

 

んで面白いのがね、こういう風に男を生理的にムリだ、嫌だ、気持ちが悪い、って拒絶している時って、なんか「自分の性」(この場合は女)も浮き彫りになってくるんだよね!いや、冷静に考えれば男の対義語は女であるからして必然的なんだけどさ。誰かさんが、男について考える時は女について考えることだー!みたいなの言ってなかった?それだよそれ!

男に対しての拒絶反応がすさまじい時って、同時に「自分の性に対する違和感、嫌悪感」も抱いている場合がまぁあるんじゃないかなぁっていうのが自論。

ふとした瞬間に意識しちゃって冷静になって、ヒエェエってなるんだよねー嫌だよねーこれ。

そしてこの小説で凄い!凄い!と特に思ったのが、蠅の描写の前の少女の行動ね!ここまで考えてようやくああーー!!ってなったよ…私はね…。

さっきエラソーに理由づけしたら違和感を覚えるみたいなこと言ってたけど、考えてみるならばまさに「自分の性」の意識そのものじゃないか?とも思ってきた。少女の行動では、正に女の象徴ともいえる事柄がギュっっと出てたよね!そう考えると、あの行動(の描写)ひとつひとつにやっぱり理由があるんだなぁと…。あーもう感嘆の溜息しか出ないよ!

いやぁー思春期さいこー学生さいこー

 

 

で、なんで少女がそんなこと思うの?レズなの?百合なの?ばんざーいって話だけど、それには色々理由がこじつけられそうですが…まぁ妥当な線でいけば、「少女は、慎重に育てられてきた。」「少女の高校は男女共学ではない。」(少女は)「しばしば躓いてよろけたりする。」あたりの記述と絡められそう。こういうの、描こうとすればいくらでも描けるんだけど、文中ではこれくらいしか理由を匂わせるエッセンスを置いてないんだよね。いやーなんていうか分かってる!最高!

なので私も、できればここについてあんまり理由づけしたくはないっていうのが本音。理由をつけるとこの感覚は全く別のものになると思うし。

この感覚って、決して特別なものではないと思うんだけど。実際はどうなんでしょうね?

 

追記:小説なり物語なりで、登場人物に名前をつけないというのは、その話に凡庸性を持たせる?なんていうか、どこの誰にでもあり得る話なんですよーっていう効果をもたらすらしいです。今回この話の中で「少女」「少年」「男」等と明記されているのはこの効果の狙いもあるのでは!?と個人的に思った!おもしろ!

まぁ深読みのしすぎだと言われればそれまでなんですが………

 

しっかし本当にあの「慎重に」というニュアンスは良いですな。一文でここまで心を惹きつけるとは…。でもなんかおーくぼんぼんだったかの番組でやってたアラサー処女がうんぬんみたいなの思い出すよ……(うろ覚えだけど)。慎重に育てるってああいうことかねぇ。

 

 

 

なんだか、筋少を初めて聞いた時のあの感覚に似ててちょっと嬉しくなりましたまる

やっぱりこういう出会いがあるから、読書はやめられないにゃあ

そして書かないとなに思ったか忘れちゃうから、メモ帳代わりのブログもやめられないにゃあ

 

あと、ブログで字数が増えると書くときめっちゃ重いの…辛い…。